Week 5 (2021/11/4)¶
今日やること
- ポインタのポインタ
- ポインタの配列
- 二次元配列とポインタ
- コマンドライン引数
まずはじめに¶
- Googleバーチャルツアーの確認
- week3最終課題のイケてるゲーム発表
ポインタのポインタ¶
今日はポインタの応用編をやっていきます。頑張っていきましょう。まずはポインタのポインタです。
素朴な例¶
「int
型の変数を指すポインタ」を「int
へのポインタ」などと呼びました。では、
「『int
へのポインタ』を指すポインタ」は考えられるのでしょうか?考えられます。それがポインタのポインタです。
次の素朴な例を考えてみましょう。
int a = 10;
printf(" a: %d\n", a); // 10
int *p = &a;
printf(" p: %p\n", p); // 0xff5c (以下、アドレスは全て人工的な例です)
printf(" *p: %d\n", *p); // 10
int **pp = &p;
printf(" pp: %p\n", pp); // 0x51a5
printf(" *pp: %p\n", *pp); // 0xff5c
printf("**pp: %d\n", **pp); // 10
このように、int **pp
とアスタリスクを2つ重ねることで、ポインタへのポインタを表現することができます。
あるポインタint *p
に対し、pp
にはポインタp
のアドレス&p
を代入します。上の表記の繰り返しですが、a
, p
, pp
の関係は次のようになります。
a
と*p
と**pp
は同じ値:10
. 型はint
p
と*pp
は同じ値:0xff5c
. 型はint *
pp
の値:0x51a5
. 型はint **
関数の引数としてポインタそのものを受け取る場合¶
さて、素朴なポインタのポインタを使う例を見てみましょう。ここではまず、「main側のポインタを、関数から編集する」という例を見てみましょう。
まず、配列中から一番大きい値を返すfind_largest
関数を
考えます。ここでは、ポインタを用いて最大値を返しています。
ここで変数が実際にどのようにメモリ中に表現されるかを見てみましょう。
以下では、通常の変数は黒、配列は赤、ポインタは青、と色分けしています Reese, p99
ここではいくつかのポイントがあります
main
が扱う領域と、find_largest
が扱う領域は違います。そのため、main
側の変数をfind_largest
から変更するには、ポインタを経由する必要があります。int a[]
とint *max
は、find_largest
側ではどちらもポインタになっています。これは先週習った、「関数引数におけるa[]
は*a
に等しい」ということですね。- 関数の呼び出し時に引数の変数3つがコピーされます。このとき、配列全てをコピーしたりするわけではないので注意してください。
- 関数引数(
a
,n
,max
)は、あくまで、関数側のメモリ領域中でのローカル変数です
上図はmax
を経由して値を更新するときの動作です。
max
はmain
側のans
を指しているので、*max
という表記でans
の中身を書き換えることができます。
上のfind_largest
は、main
側のint型変数ans
に、arr[3]
中の最大値を記述する関数でした。
次にfind_largest2
を考えましょう。これは、
main
側のint型ポインタp_ans
が、arr[3]
中の最大要素を指すようにする関数です。ここでは、ポインタのポインタを使います。
下図を見てみましょう。ここではポインタのポインタを緑色で表現しました。
ここでは次のポイントがあります
- 基本的な構造は先ほどの
find_largest
と変わりません。 find_largest
では関数側のint *max
がmain側のint ans
を編集しました。つまり、intを編集するためにポインタを使いました。一方、find_largest2
では、関数側のint **p_max
がmain側のint *p_ans
を編集します。つまり、intポインタを編集するので、intポインタのポインタを使いました。
実際にp_ans
を編集するときの挙動が上の図になります。p_ans
には、arr
要素中で最大のものアドレス(&arr[1]
)を代入しています。
このようにして、「main側のポインタ」を編集する際に、関数側では引数として「ポインタのポインタ」を使う場合があります。 ポインタのポインタを扱う例は他にもあり、最も使う例として「ポインタの配列」があります。それを次章で見ていきましょう。
やってみよう(20分)
上記を写経してみましょう
クイズ
int *max
を引数にとるに対し、最大値を直接、値としてreturnするvoid find_largest(int a[], int n, int *max) { ... }
を書いてみましょう。つまり、次のような使い方になります。int find_largest_(int a[], int n) { ... }
これは簡単ですね。int ans = find_largest(arr, 3);
int **p_max
を引数にとるに対し、最大要素へのポインタ(アドレス)を直接値としてreturnするvoid find_largest2(int a[], int n, int **p_max) { ... }
を書いてみましょう。int *find_largest2_(int a[], int n) { ... }
答え
- 例えば以下。
ここでポイントは、ある型
int find_largest_(int a[], int n) { int max = a[0]; for (int i = 0; i < n; ++i) { if (max < a[i]) { max = a[i]; } } return max; } int main() { int arr[] = {3, 6, 2}; int ans1, ans2; find_largest(arr, 3, &ans1); ans2 = find_largest_(arr, 3); printf("%d %d\n", ans1, ans2); // 6 6 }
T
の変数xを変更したいとき、次の二通りがあるということです。void f(T *x) { ... }
ポインタとして変更T f() { ... }
直接return
- 例えば以下。
ここでポイントは、ある型
int *find_largest2_(int a[], int n) { int *p_max = &a[0]; // 最初の要素へのポインタ for (int i = 0; i < n; ++i) { if (*p_max < a[i]) { p_max = &a[i]; // i番目の要素へのポインタ } } return p_max; } int main() { int arr[] = {3, 6, 2}; int *p_ans1, *p_ans2; find_largest2(arr, 3, &p_ans1); p_ans2 = find_largest2_(arr, 3); printf("%d %d\n", *p_ans1, *p_ans2); // 6 6 }
T
へのポインタ変数pを変更したいとき、次の二通りがあるということです。void f(T **p) { ... }
ポインタとして変更。つまりポインタのポインタを用いるT *f() { ... }
直接return
このように思考を整理しておくと、ソフトウェア2でmallocや線形リストといった、ポインタを駆使する概念を習うときに役にたちます。
ポインタの配列¶
さて、それではポインタの配列を考えてみましょう。
ポインタ配列の基本¶
char s1[] = "toyama";
char s2[] = "ishikawa";
char s3[] = "fukui";
char *hokuriku1[3];
hokuriku1[0] = s1; // &s1[0]といっしょ。s1の先頭アドレスを代入
hokuriku1[1] = s2;
hokuriku1[2] = s3;
hokuriku1
は配列です。そして、その要素は「char
型へのポインタ」です。
そして、hokuriku1
の各要素には文字列の先頭アドレスを代入にしています。これを図示すると次のようになります。
このように、文字列s1
, s2
, s3
がどこかで確保されます。そして、その先頭を、hokuriku1
の各要素が指します。
hokuriku1[0]
という表記がs1
と同じであることを考えると、hokuriku1[0][0]
は't'
であることがわかります。
要素のアクセスは次のように書けます。
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
hokuriku1[i][0] = 'A';
printf("%s\n", hokuriku1[i]);
}
// 結果:
// Aoyama
// Ashikawa
// Aukui
さて、このような「文字列を複数確保 + それらの先頭を指すポインタの配列」は、配列の初期化記法を用いて次のようにも書けます。
char *hokuriku1[] = {"toyama", "ishikawa", "fukui"};
コラム
なぜ初期化記法を使って作った文字列は編集できないのでしょうか?これはweek4で習った文字列の初期化
がそのまま適用されているからです。char s1[] = "toyama";
のように明示的に配列を作った場合はそれらは自由に編集できます。
一方、初期化記法を用いた場合は、「自分が編集できる配列」が確保されているのではなく、プログラムのどこかに確保された「編集不可能なリテラル」を指しているだけなのです。
以下を実行してエラーになることを確認しましょう。
char *hokuriku1[] = {"toyama", "ishikawa", "fukui"};
hokuriku1[0][0] = 'a'; // Segmentation Fault
再度確認しておくと、例えば次のようにすると、最初の"zaku"
と最後の"zaku"
は、同じリテラルなので、同じアドレスになったりします。
char *ms[] = {"zaku", "gufu", "zaku"};
printf("%p %p %p\n", ms[0], ms[1], ms[2]);
// 0x55a31d9b5004 0x55a31d9b5009 0x55a31d9b5004
上記の文字列の場合は書き込みはできないものの、読み込みはできます。
一方で、文字列でない場合は、そもそも配列を確保できないので注意してください。
int *a[] = {{0, 1}, {2, 3, 4}, {5}}; // この書き方はダメ
printf("%d", a[0][0]); // Segmentation Fault
{0, 1}
のような書き方は、文字列リテラルのようにどこかに領域を確保したりしないからです。この書き方は配列を初期化するときに使えるというだけです。
次のように、明示的に要素の配列を確保すれば、大丈夫です。
int arr1[] = {0, 1};
int arr2[] = {2, 3, 4};
int arr3[] = {5};
int *b[] = {arr1, arr2, arr3}; // これは、通常の「配列の初期化」してるだけです。その要素として、各arrの先頭アドレスが入ります。
printf("%d\n", b[0][0]); // 0
さて、ポインタ配列の利点は何でしょうか。プログラミングを行う上で、もし全ての要素を配列や多重配列に保持できるのであれば話は楽なのですが、 ときにはそのようなことが難しい場面があります。その際に、配列の入り口だけを用意しておき、必要に応じて配列が指す先を指定する、 ということをしたい場面があります。そのときに、ポインタ配列は最適です。 その例としてスワップがあげられます。ポインタ配列の要素であるポインタは値としてアドレスを持つだけなので、要素を簡単にスワップすることができます。 これは、後述するように、二次元配列では簡単にはできません。
char *tmp = hokuriku[1];
hokuriku1[1] = hokuriku1[0]; // hokuriku[0]: "toyama" になった
hokuriku1[0] = tmp; // hokuriku[1]: "ishiwaka" になった
ここでは、右側の文字列たちには変更が加わっていないことに注意してください。 あくまでポインタ配列の中の値(アドレス)だけが更新されています。ポインタ配列は、特に、ソフト2でmallocを習う際に必須になります。
ポインタ配列を引数にもつ関数¶
さて、上記のhokuriku1
のようなポインタ配列を引数にもつ関数はどうすれば作れるでしょうか?
ここでは、通常の配列 int a[]
を引数に持つ関数はvoid f(int a[]) {...}
とそのまま書けたことを思い出しましょう。
ポインタ配列はあくまで普通の配列です。その要素がポインタというだけです。なので、通常の配列と同様に、そのまま書けます。
void print_each(char *prefectures[], int n) {
for (int i = 0; i < n; ++i) {
printf("%s-ken\n", prefectures[i]);
}
}
prefectures
の中身に"-ken"
を追加して表示しています。
ここでは、要素がint
型の配列を引数にとるときはint a[]
と書いたのと同様に、要素がchar *
型である配列を引数にとっているのでchar *prefectures[]
となっているというだけで、話はシンプルです。
さて、今日の最初に再確認したように、関数の引数に配列が与えられたときは、実はそれはポインタであるという点を思い出しましょう。
すなわち、関数引数中でT a[]
の形が現れたときは、それは常にT *a
でした。これを適用すると、上記の関数は実は次と同じです。
void print_each(char **prefectures, int n) { ... }
ここで知っておくべきことは、ポインタのポインタが出現したとき、それは様々な使い方があるということです。
- ポインタのポインタはポインタ単体を指し、そのポインタは変数単体を指す:
void find_largest2(int a[], int n, int **p_max)
- ポインタのポインタはポインタ配列を指し、その要素のポインタは変数の配列(文字列)を指す:
void print_each(char **prefectures, int n)
{単体, 配列}×{単体, 配列}になっているので、残りの2パターンを考えることもできます。
- ポインタのポインタはポインタ単体を指し、そのポインタは変数の配列を指す
- ポインタのポインタはポインタ配列を指し、その要素のポインタは変数単体を指す
現実では、find_largest2
のように素朴なポインタの例か、あるいはprefectures
のようにポインタ配列が文字列を指す例が多いと思いますが、
複雑なものが来ても驚かないようにしてください。
やってみよう(30分)
上記を写経してみましょう
クイズ
int *v[]
を、「int
型配列の先頭アドレスを集めた配列」とします。このv
をポインタで指すとすると、どういう型になりますか?また、要素にアクセスするとき、どのようになりますか?- ポインタ配列
char *prefectures[]
、整数i
、整数j
が与えられたとき、prefectures[i]
とprefectures[j]
をswapする関数を書いてください。 - 上で勉強した、次のパターンの「ポインタのポインタ」の使用例を書いてください。型は
char
でお願いします。- ポインタのポインタはポインタ単体を指し、そのポインタは変数の配列(すなわち文字列)を指す
- ポインタのポインタはポインタ配列を指し、その要素のポインタは変数単体(すなわちchar一個)を指す
答え
- 例えば次のようになります。
これは、型
int arr1[] = {1, 2, 3}; int arr2[] = {4, 5}; int *v[] = {arr1, arr2}; // ポインタ配列 int **p; p = v; // ポインタのポインタで指し示す printf("v[0][1]: %d\n", p[0][1]); // v[0][1]: 2 printf("v[1][0]: %d\n", p[1][0]); // v[1][0]: 4
T
に対して、T v[]
を考えると、そのポインタはT *p
でしたね。このT
にint *
を代入したと思うとわかります。 - 例えば以下。
void swap(char *prefectures[], int i, int j) { char *tmp = prefectures[i]; prefectures[i] = prefectures[j]; prefectures[j] = tmp; } int main() { char *hokuriku1[] = {"toyama", "ishikawa", "fukui"}; print_each(hokuriku1, 3); // toyama-ken, ishikawa-ken, fukui-ken swap(hokuriku1, 1, 2); // ishikawaとfukuiをswap print_each(hokuriku1, 3); // toyama-ken, fukui-ken, ishikawa-ken }
- 例えば以下が「ポインタのポインタはポインタ単体を指し、そのポインタは変数の配列(文字列)を指す」例。
例えば以下が「ポインタのポインタはポインタ配列を指し、その要素のポインタは変数単体(char一個)を指す」例char *animal = "dog"; char **p; p = &animal; printf("%s\n", *p); // dog
char c1 = 'a', c2 = 'b', c3 = 'c'; char *alphabets[] = {&c1, &c2, &c3}; char **p; p = alphabets; for (int i = 0; i < 3; ++i) { printf("%c, ", *(p[i])); // a, b, c } printf("\n");
二次元配列とポインタ¶
さて、次は二次元配列のことを思い出しましょう。二次元配列は、その使用目的はポインタ配列と似ていますが、中身は違うものです。
二次元配列の基本¶
以下のような初期化表記で二次元配列を確保できましたね。
char hokuriku2[][9] = {"toyama", "ishikawa", "fukui"};
これは、先ほどの「ポインタ配列」と同じようにアクセスできます。
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
printf("%s\n", hokuriku2[i]);
}
// toyama
// ishikawa
// fukui
二次元配列を可視化すると次のようになります。二次元配列の実際のメモリレイアウトについては既に勉強しましたね。
ここで、ポインタ配列hokuriku1
と、二次元配列hokuriku2
は、どちらも同じ情報を表現していますが違いがあります。
- 二次元配列は全ての要素が同じ長さである必要があります。すなわち、最長のものに合わせる必要があります。この場合は
ishikawaと\0
の合計9個のchar
を、全ての行について確保する必要があります。これは、例えばfukui
の後ろには無駄な領域を確保していることを意味します。 - 一方で、二次元配列はメモリ上では連続して確保されるため、わかりやすいという面があります。例えば
hokuriku2
の場合は 3 x 9 の二重forループで全体を舐めることが出来ます。
また、二次元配列では、文字列以外も初期化記法で書けることを思い出しましょう。
int arr[][3] = {
{1, 2, 3},
{4, 5, 6}
};
二次元配列をポイントする¶
さて、「二次元配列のポインタ」はどうなるのでしょうか?ここは非常に難しいので、わからなければ、今のところは結果だけ知っておいてください。
次のような奇妙な表記になります。Reese, p104
int (*p)[3]; // 「int 3つ分」を1単位とするポインタ
p = arr; // p と p + 1 の間の値(アドレス)の差は12(つまりint3つ分)
int (*p)[3];
という新しい表記が登場しました。ここでは、いつも通りp
というポインタを1つ作っています。
そしてそのp
は「int 3つ分」を一単位とするポインタです。カッコを忘れないでください。
カッコを忘れてint *p[3]
としてしまうと上で習ったポインタ配列になってしまいます。
p
はポインタなので、p = arr
という表記でarr
の先頭アドレスを代入出来ます。
さて、「int
3つ分を単位とする」とはどういうことでしょうか?普通のint
ポインタ(int *ip;
)の場合、「int
1つを単位とする」ので、
ip + 1
とip
の値(アドレス)の差は4でした。ここでは、p
はint
3つを単位とするため、p + 1
とp
の値(アドレス)の差が12になっています。
さて、なぜそんな奇妙なポインタが出てくるのでしょうか?これは二次元配列の構造を考えるとわかります。
2x3の二次元配列int arr[2][3]
について、&arr[0]
とは、要素3のint配列(の先頭アドレス)ですね。
そして、arr[1]
は、次の「要素3のint配列(の先頭アドレス)」ですね。
以上より、arr[0]
とarr[1]
のアドレスの差は、4 * 3 = 12
になることがわかります。4バイト * 三つ分です。
すなわち、&arr[0]
と&arr[1]
の差は12です。
さて、p
がarr
を指すポインタだとしましょう。ここでポインタと配列の基本ルールを思い出しましょう。
- ポインタ
p
が配列arr
を指しているとする p + 1
、&p[1]
、arr + 1
、&arr[1]
は全て同じものを指す。すなわち、p
もarr
も同じように扱える
この基本ルールにより、&arr[0]
と&arr[1]
の差が12である以上、p
とp + 1
の値(アドレス)の差も12である必要があります。
なので、arr
を指すポインタは、「12バイト = int * 3」を単位とするポインタである、ということになります。
この関係を下図にまとめます。
printf("%p %p\n", &arr[0], &arr[1]); // 0x7fff571015f0 0x7fff571015fc つまり差は12
printf("%p %p\n", p, p + 1); // 0x7fff571015f0 0x7fff571015fc
ここでの結論は、
- 型
T
で幅W
の二次元配列arr
を考える。T arr[][W];
- この
arr
へのポインタp
は、T (*p)[W] = arr;
と書ける - このポインタは
sizeof(T) * W
を単位とする。 W
は省略できない
ということです。
二次元配列を引数に持つ関数¶
さて、二次元配列を関数引数にとるとどうなるでしょうか?その例を以下に示します。
double avg_mat(int height, int width, int mat[][width]) {
double sum = 0.0;
for (int h = 0; h < height; ++h) {
for (int w = 0; w < width; ++w) {
sum += mat[h][w];
}
}
return sum / (height * width);
}
int main () {
int arr[][3] = {
{1, 2, 3},
{4, 5, 6}
};
printf("avg of arr: %f\n", avg_mat(2, 3, arr)); // 3.5
}
avg_mat
は二次元配列の要素の平均値を出すものです。ここでは以下のポイントがあります
int mat[][width]
のように、一つ目の添字(高さ)は省略できるが、二つ目の添え字(幅)は省略できない- しかし、幅パラメータは同時に
int width
といった形で与えることができる(C99のVariable-Length Arrayの機能,King, p200
)
コラム
C99以前では、上記を達成するためには例えば次のようにdefineなどを用いるのが普通であり、非常にめんどくさかったのです。
#define WIDTH 3
double avg_sum(int height, int mat[][WIDTH]) { ... }
さて、関数引数の配列は実はポインタであることを何度も勉強しましたね。関数引数においてint x[]
はint *x
であるというルールを適用すると、上記の関数は次と同じです。
double avg_mat(int height, int width, int (*mat)[width]) { ... }
sizeof(int)
* width
」を単位としたポインタが登場しました。
ここでは二次元配列をポインタで受け取っているということなので、まさにその通りになりましたね。
さて、二次元配列をそのまま扱うのではなく、一旦それをほぐし、単純な一次元配列だと解釈して処理することもできます。
double avg_mat2(int *mat, int num_element) {
double sum = 0.0;
for (int i = 0; i < num_element; ++i) {
sum += mat[i];
}
return sum / num_element;
}
avg_mat2
は処理の結果はavg_mat
と同じですが、データの与え方が単純なint
ポインタになっています。
そして、総合計要素分だけ値をスキャンして、平均を計算します。
printf("%f\n", avg_mat2(&arr[0][0], 2 * 3)); // OK
arr[0][0]
は二次元配列の先頭要素であり、型はint
ですね。そのアドレスである&arr[0][0]
は、int
へのポインタであるint *
で指し示せます。
なので、これを引数に与えることで計算できます。これは定義通りですね。
さて、実はこれは以下のように書くこともできます。
printf("%f\n", avg_mat2(arr[0], 2 * 3)); // OK
&arr[0][0]
ではなくarr[0]
でもOKかというと、
- ショートアンサー:
arr[0]
は、二次元配列であるarr
の最初の行を表します。つまり、int
の配列を表します。int
の配列はint
ポインタであるint *
に渡せるので、これでOKです。
- 別の説明:
- 任意の配列
v
について、&v[3]
のような「添え字アクセス +&
」は、v + 3
のような「変数名 + オフセット」と同じ、というルールを思い出しましょう。 - これを適用すると、
&arr[0][0]
はarr[0] + 0
と同じということがわかります。この最後の0を消すことで、arr[0]
となります。 - ちなみに細かいですが、
arr[0] + 0
はポインタですが、arr[0]
は配列です。この辺を詳しく知りたい人は次章を見てください。
- 任意の配列
コラム
さて、&arr
, arr
, &arr[0]
, arr[0]
は全て、値としては&arr[0][0]
と同じ(配列の先頭要素のアドレス)ですが、型が違います。
なので、以下を実行すると計算は実行できて答えも正しいのですが、「ポインタの型が違っているよ」と警告が出ます。
これについて詳しく知りたい人は次章をよく読んでみてください。
printf("%f\n", avg_mat2(&arr, 2 * 3));
printf("%f\n", avg_mat2(arr, 2 * 3));
printf("%f\n", avg_mat2(&arr[0], 2 * 3));
やってみよう(20分)
- 上記を写経してみましょう
double avg_mat(int mat[][width], int height, int width) { ... }
のように書くとエラーになります。これはwidth
を宣言する前にmat
中でwidth
を使ってしまっているからです。これを実際に確認してみてください。
クイズ
ポインタ配列のクイズでswap
を書きました。この二次元配列版を書いてみましょう。
答え
例えば以下。配列ポインタ版に比べ、多次元配列版では幅の情報(max_len
)を追加で入力する必要があります。また、ポインタのコピーといったことも出来ないので、下では愚直に一文字ずつスワップしています。
void swap2(int max_len, char prefectures[][max_len], int i, int j) {
for (int len = 0; len < max_len; ++len) {
char tmp = prefectures[i][len];
prefectures[i][len] = prefectures[j][len];
prefectures[j][len] = tmp;
}
}
int main () {
char hokuriku2[][9] = {"toyama", "ishikawa", "fukui"};
swap2(9, hokuriku2, 1, 2); // "toyama", "fukui", "ishikawa"
}
二次元配列とポインタのチートシート¶
二次元配列の型は複雑なので、以下のようにまとめました。
以下をmain.cpp
として保存し、コンパイルすると、手元で実行出来ます。
型情報は例えばデバッガを使えば逐一調べられますが、今回は明示的にプリントすることでまとめました。これらを暗記する必要はないですが、困ったときには調べられるようにしておいてください。
ちなみに、Google Cloud Shell Editor上では、型を間違えて警告(変数の下に破線)が出来るときは、そこにマウスオーバーすることで型の情報を得ることができると思います。
#include <typeinfo>
#include <stdio.h>
// 一次元配列と二次元配列について、型の詳細。
// typeinfoというc++の機能を使えば、以下のように型を表示できる。
// typeid(変数).name() で型が表示される。
// そのままだと見にくいので、c++filtというコマンドで見やすく出来る
//
// How to run:
// (1) コンパイル。gccではなくてg++なので注意。つまりこれはcではなくc++プログラム
// $ g++ main.cpp
// (2) 実行。パイプでc++filtというプログラムに渡すと、見やすくなる。
// (ただし、文字列置換を行うので、普通のprintfの出力がおかしくなるかもしれないので注意)
// $ ./a.out | c++filt -t
int main(int argc, char *argv[]) {
// =================== 一次元配列の場合 ===================
int a[] = {1, 2, 3};
int *p;
p = a;
// 次のように、配列の型は「int [3]」、int型へのポインタは「int*」となる
printf("=== 0 ===\n");
printf("%s\n", typeid(a).name()); // int [3]
printf("%s\n", typeid(p).name()); // int*
// 配列とポインタは同じように扱えると習ったが、それでも、
// int [3] と int*は型が違うじゃないかと思うかもしれない。
// これはルールなので仕方ないのだが、一つの説明として、
// a + 0 を考えてみる。 a + 0 の型は実はポインタと同じ int* である。
// a + 0 も a も似たようなものだと考えると、この事実から、
// 配列をポインタと同じように扱えることがわかるかもしれない。
// 配列が関数に渡されるときは、こっちになっていると思えばOK。
// 逆に、複雑な配列に対してそれをポイントする型がわからないときは、
// "+0"して型を調べてみるといいかもしれない。
printf("%s\n", typeid(a + 0).name()); // int*
// 「a」だけの場合、それは実体としての配列(intを3つ分確保)を指している。
// sizeofも12になる。 一方、「a + 0」とした場合、
// それをポインタだとコンパイラは解釈する。sizeofも8になる。
// この二つはポインタを経由して扱う場合は同じもの。なので、
// int *p = aと出来る。
// 結論として、型が「int [3]」のものは、「int*」でポイント出来る。
printf("%p %p\n", a, a + 0); // 値は同じ。 0x7ffd864060b4 0x7ffd864060b4
printf("%lu\n", sizeof(a)); // sizeofは違う:12
printf("%lu\n", sizeof(a + 0)); // sizeofは違う:8
// 「a + 1」のように指定すると、「p + 1」と全く同じにふるまう
printf("=== 1 ===\n");
printf("%s\n", typeid(a + 1).name()); // int*
printf("%s\n", typeid(p + 1).name()); // int*
printf("%s\n", typeid(*(a + 1)).name()); // int
printf("%s\n", typeid(*(p + 1)).name()); // int
// *(a + i) とa[i]は同じ
printf("=== 2 ===\n");
printf("%s\n", typeid(&a[1]).name()); // int* ちなみにこれは &(a[1])のこと
printf("%s\n", typeid(&p[1]).name()); // int*
printf("%s\n", typeid(a[1]).name()); // int
printf("%s\n", typeid(p[1]).name()); // int
printf("=== 3 ===\n");
// &aと&pは型も値も違う(week 4を参照)
// &aは何かを考えることは難しい。結論はint (*)[3] である。
// すなわち、「int 3つ」を単位とするポインタである。
// それはなぜだろうか?例えば変数一つの場合を考える。
// int n;
// int *p;
// p = &n;
// このように、「int 1つ」であるnのアドレス(&n)を代入すべきポインタは、
// int *である。すなわち、「int 1つ」を単位とするポインタである。
// この議論を拡張し、int a[3]; とすると、
// 「int 3つ」であるaのアドレス(&a)を代入すべきポインタは、
// int (*)[3] すなわち、「int 3つ」を単位とするポインタである、と言える
printf("%s\n", typeid(&a).name()); // int (*)[3]
// &pは単純にポインタのさらにアドレスなので、ポインタのポインタ
printf("%s\n", typeid(&p).name()); // int**
// &aはaと同じ。&pはポインタ変数そのもののアドレス
printf("%p %p\n", &a, &p); // 違う: 0x7ffd864060b4 0x7ffd86406098
// =================== 二次元配列の場合 ===================
int arr[][3] = {{1, 2, 3}, {4, 5, 6}};
int (*p2)[3];
p2 = arr; // p2はarrを二次元配列として指すポインタ。
// 授業で習った通り、arrは二次元配列 int [2][3] で、
// p2は「int 3つ分を単位とするポインタ」
// では、int [2][3] を指すポインタが int (*)[3]だと
// どうすればわかるだろうか?
printf("=== 4 ===\n");
printf("%s\n", typeid(arr).name()); // int [2][3]
printf("%s\n", typeid(p2).name()); // int (*)[3]
// 一次元配列の例で見た通り、0を足すと、コンパイラは
// arrをポインタとして解釈する。そのときの型を見ると、
// それは、arrをポインタとして指すときの型。
// なので、この場合、p2と型が同じなので、OKということになる。
printf("%s\n", typeid(arr + 0).name()); // int (*)[3]
// 添え字を使って各行にアクセスする場合。これは一次元配列そのものになる
printf("=== 5 ===\n");
printf("%s\n", typeid(arr[0]).name()); // int [3]
printf("%s\n", typeid(p2[0]).name()); // int [3]
printf("%s\n", typeid(arr[0] + 0).name()); // int*
printf("%s\n", typeid(p2[0] + 0).name()); // int*
// arrやp2に&をすると次のようになる。値も異なる。
printf("=== 6 ===\n");
printf("%s\n", typeid(&arr).name()); // int (*)[2][3]
printf("%s\n", typeid(&p2).name()); // (**)[3]
printf("=== 7 ===\n");
// 以下は全てアドレスの値は同じだが、型は異なる
// 0x7ffcc93804a0 0x7ffcc93804a0 0x7ffcc93804a0 0x7ffcc93804a0 0x7ffcc93804a0
printf("%p %p %p %p %p\n", &arr, arr, &arr[0], arr[0], &arr[0][0]);
// &arrは、二次元配列そのものを一単位として扱う。よって、
// 「intが2 * 3個」を一つの単位とする。
// これは一次元配列名に&をしたときと同じ。難しいが、普段は使わない
printf("%s\n", typeid(&arr).name()); // int (*)[2][3]
// arrは二次元配列そのもの。これはそのまんま。
printf("%s\n", typeid(arr).name()); // int [2][3]
// 再度の注意として、arrに0を足すと、これをポインタとして解釈してくれる
printf("%s\n", typeid(arr + 0).name()); // int (*)[3]
// arr[0]は一行目の一次元配列そのもの
printf("%s\n", typeid(arr[0]).name()); // int [3]
// 再度の注意として、arr[0]に0を足すと、これをポインタとして解釈してくれる
printf("%s\n", typeid(arr[0] + 0).name()); // int*
// &arr[0]は難しい。考え方として、次の二通りがあると思う
// (1) &arr[0](アンド+添え字アクセス)は arr + 0(変数名+オフセット)と同じ
// というルールを適用すると、上のarr + 0になる、と覚える
// (2) arr[0]は一次元配列そのものだった。一次元配列そのものに&をつけると、
// 配列長を単位とするポインタになったことを思い出す
// (上のほうの === 3 === のところを参照)
printf("%s\n", typeid(&arr[0]).name()); // int (*)[3]
// arr[0][0]はintなので、そのポインタ。
printf("%s\n", typeid(&arr[0][0]).name()); // int*
// =================== 三次元配列の場合も同様 ===================
int arr2[2][3][4] = {
{{ 1, 2, 3, 4}, { 5, 6, 7, 8}, { 9, 10, 11, 12}},
{{13, 14, 15, 16}, {17, 18, 19, 20}, {21, 22, 23, 24}}
};
int (*p3)[3][4];
p3 = arr2; // p3はarr2を三次元配列として指すポインタ。
printf("=== 8 ===\n");
printf("%s\n", typeid(arr2).name()); // int [2][3][4]
printf("%s\n", typeid(p3).name()); // int (*)[3][4]
printf("%s\n", typeid(arr2 + 0).name()); // int (*)[3][4]
return 0;
}
コマンドライン引数¶
さて、次はコマンドライン引数について見ていきましょう。
コマンドライン引数の基本¶
コマンドライン引数とは、プログラムを実行するときに追加で与える情報です。例えば次を考えましょう。
#include <stdio.h>
int main (int argc, char *argv[]) {
return 0;
}
main
関数の引数として次の二つを与えています
int argc
: コマンドライン引数の個数char *argv[]
:コマンドライン引数の内容を表すポインタ配列
これをコンパイルして次のように実行したとします。
$ ./a.out hoge 123
argc
およびargv
には次のようにコマンドライン引数情報が入ります。
すなわち、argv
の各要素には引数が入り、その個数がargc
で与えられます。
例えばargv[1]
とすると、それは"hoge"
を意味します。
ルールとして、argv[0]
にはプログラム名そのものが入ります。
また、argv
の最後の要素はNULL
になっていると決まっています。
このargc
とargv
を使うと、プログラムに対して簡単に情報を入力することができます。
コラム
argc
, argv
の変数名は実は任意です。以下でも大丈夫です
int main (int kosuu, char *hikisuu[]) { ... }
また、これまでに習った通り、関数引数では*argv[]
は**argv
と同じなので、以下のようにも書けます。
int main (int argc, char **argv) { ... }
argv
をポインタ配列にするか、ポインタのポインタにするかは、好みです。
コマンドライン引数を使う例¶
それでは例を見てみましょう。まず、入力をそのまま出力する、echo
コマンドを思い出しましょう。
$ echo hoge 123
hoge 123
myecho
を作ってみましょう。
以下をmyecho.c
とします。
#include <stdio.h>
int main(int argc, char *argv[]) {
for (int i = 1; i < argc; ++i) {
printf("%s ", argv[i]);
}
printf("\n");
}
for
の開始が1からになっている点に注意してください。これはargv[0]
はコマンドそのものになるため省いているからです。
これをmyecho
という名前でコンパイルします
$ gcc myecho.c -o myecho
$ ./myecho hoge 123
hoge 123
argv[0]
は必ずプログラム名なので、それはプリントしていません。
また、足し算の例も見てみましょう。次をsum.c
として保存します。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
int main(int argc, char *argv[]) {
int nums[argc - 1];
for (int i = 1; i < argc; ++i) {
nums[i - 1] = atoi(argv[i]);
}
int sum = 0;
for (int i = 0; i < argc - 1; ++i) {
sum += nums[i];
}
printf("%d\n", sum);
}
atoi
はstdlib.h
で定義されている便利関数で、文字列が整数と解釈出来る場合は整数として読み込んでくれます。
これをコンパイルすると、次のように使えます。
$ ./sum 12 23 34
69
atoi
でおかしくなるので注意してください。そのほかに、少数を読み取ってくれるatof
などもあります。
やってみよう(20分)
上記を写経してみましょう。
クイズ
コマンドライン引数の中に"toyama"
, "ishikawa"
, "fukui"
のどれかが含まれていたら、"hokuriku!"
出力するプログラムを書いてください。仮に引数中にたくさん北陸の県が含まれていても、一回だけ"hokuriku!"
と言うようにしてください。この際、文字列の一致を判定するstrcmp
は使ってもOKです(string.hをincludeする必要があります)
答え
例えば以下です。
#include <stdio.h>
#include <string.h>
int is_hokuriku(const char *prefecture) {
char *hokuriku[] = {"toyama", "ishikawa", "fukui"};
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
if (strcmp(prefecture, hokuriku[i]) == 0) {
return 1;
}
}
return 0;
}
int main(int argc, char *argv[]) {
for (int i = 1; i < argc; ++i) {
if (is_hokuriku(argv[i])) {
printf("hokuriku!\n");
return 0;
}
}
return 0;
}
$ a.out aichi shizuoka hokkaido
$ a.out nagano ishikawa
hokuriku!
$ a.out fukui ishikawa
hokuriku!
宿題¶
それでは今週の宿題です。
- 締切は次の授業の前日の深夜23:59までです(今回の場合、2021/11/10, 23:59)
- 宿題リンクをslackで配付します。このリンクは公開しないでください。
week5_1¶
文字列の置換アルゴリズムを実装しましょう。
文字列input
、pattern
、new_pattern
が与えられるとします。input
中にpattern
が出現した場合、new_pattern
で置換し、その結果をoutput
に保存するという処理を実装しましょう。
ここで、もしpattern
が複数回現れる場合、最初の1つのみを置換しましょう。
main.c
中のreplace
という関数を編集してください。main.c
の中身は触らないでください。
input
, pattern
, new_pattern
は、以下のように、それぞれコマンドライン引数で順番に与えられるとします。
最終的に次のようになればOKです。
$ ./a.out abcdefg abc xxx
xxxdefg
$ ./a.out abcdefg cd hijk
abhijkefg
$ ./a.out abcabc bc yy
ayyabc
$ ./a.out aaaaaa aaa a
aaaa
ここで、
input
,pattern
,new_pattern
,output
のどれも、100文字程度以内におさまると仮定してOKです(100要素のchar配列を使ってOKです)string.h
をincludeしてもいいですが、使っていいのはweek3でならったstrlen
,strcpy
,strcat
,strcmp
のみ、とします。もっとハイレベルな関数もあるのですが、それを使わずに自分で実装してみるというのが課題の主旨です。
week5_2¶
マルコフアルゴリズムを実装しましょう。 マルコフアルゴリズムの説明についてはこのサイトが詳しいです。今回扱うのは以下のような問題とします。
- (1) 入力文字列、および (2) 任意個のルール、が与えられる。
- ここでルールとは、
aa:xx
のようにコロンを挟んだ文字列という形で与えられる。この意味は、aa
をxx
で置換せよということである。 - 入力文字列に対し、ルールを順番に適用していく。もし置換が発生したら、あらためて最初のルールから適用しなおす。
例として以下を考えます。以下のように、./a.out
+ 入力文字列
+ ルール1
+ ルール2
+ ... という形でプログラムを実行します。
./a.out oooo oo:o o:x
- 入力文字列が
oooo
- ルール1が「
oo
からo
への置換」 - ルール2が「
o
からx
への置換」
ということです。
ここで、アルゴリズムは次のように動作します
- ルール1を適用。
oooo
->ooo
(最初の二個のo
を一個のo
に置換) - 置換が発生したので、ルール1に戻る
- ルール1を適用。
ooo
->oo
(最初の二個のo
を一個のo
に置換) - 置換が発生したので、ルール1に戻る
- ルール1を適用。
oo
->o
- 置換が発生したので、ルール1に戻る
- ルール1を適用。何も起こらない。
o
- ルール2を適用。
o
->x
- 置換が発生したので、ルール1に戻る
- ルール1を適用。何も起こらない。
x
- ルール2を適用。何も起こらない。
x
- 終わり
よって、結果としてx
が得られます。
このようなプログラムを作ってください。main.c
の中身を自由に編集して大丈夫です。
ここでは、Week5_1課題と同様に、各文字列は100字程度以内で十分表現できるとします。string.h
中で使っていい関数はstrlen
, strcpy
, strcat
, strcmp
のみです。
Week5_1課題で考えた関数を直接使ってもいいです。
ルールの中にコロンが入る、例えば「::x
(コロンをxに置換する)」のような特殊ケースは考えなくてよいです。
課題1¶
まずは、ルールを正しくパースしましょう。すなわち、コロンを含んだ文字列という形で与えられる各ルールを、分解して保存して表示しましょう。 次のように、引数をつけて実行したときに、ルールをパースした内容を表示してください。
$ ./a.out ooo oo:o o:x
input = ooo
rule0 = oo:o
rule1 = o:x
pattern0 = oo, new_pattern0 = o
pattern1 = o, new_pattern1 = x
課題2¶
マルコフアルゴリズムを実装してください。
$ ./a.out ooo oo:o o:x
input = ooo
rule0 = oo:o
rule1 = o:x
pattern0 = oo, new_pattern0 = o
pattern1 = o, new_pattern1 = x
final output: x
また、別の例は以下になります。これはwikipediaの例です。
$ ./a.out 'I bought a B of As from T S' A:apple B:bag S:shop T:the 'the shop:my brother'
input = I bought a B of As from T S
rule0 = A:apple
rule1 = B:bag
rule2 = S:shop
rule3 = T:the
rule4 = the shop:my brother
pattern0 = A, new_pattern0 = apple
pattern1 = B, new_pattern1 = bag
pattern2 = S, new_pattern2 = shop
pattern3 = T, new_pattern3 = the
pattern4 = the shop, new_pattern4 = my brother
final output: I bought a bag of apples from my brother
課題3¶
aaa:
のように、置換して文字を消すというパターンも処理できるようにしてください。すなわち、aaa
を発見したらそれを消すという処理です。例は以下です。
これもwikipediaを見ると動作例がのっています。
$ ./a.out 101 '|0:0||' '1:0|' '0:'
input = 101
rule0 = |0:0||
rule1 = 1:0|
rule2 = 0:
pattern0 = |0, new_pattern0 = 0||
pattern1 = 1, new_pattern1 = 0|
pattern2 = 0, new_pattern2 =
final output: |||||
0:
というルールがあるので、0
が発生した場合それを全て消していくという処理になります。
答えの例¶
答え
week5_1
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#define MAX_LEN 100
// 関数は自由に追加してよい
int match(const char s[], const char pattern[]) {
// sもpatternもvalidな文字列とする。sの領域は十分に長いとする。
// sの先頭から文字をチェックしていき、patternと完全に一致すれば1を、そうでなければ0を返す
// たとえば
//
// s = "abcdef"
// pattern = "abc"
// -> OK
//
// s = "abcdef"
// pattern "bc"
// -> NO
for (int i = 0; pattern[i] != '\0'; ++i) {
if (s[i] != pattern[i]) {
return 0;
}
}
return 1;
}
void override(char s[], const char pattern[]) {
// patternはvalidな文字列とする
// sにpatternを上書きしていく。sの領域は十分に長いとする。sはvalidな文字列でなくてもいい(最後がNULL文字じゃなくてもいい)
// 例えば s = "xxxxxxx", pattern = "abc" のとき s = "abcxxxx"になる
int i;
for (i = 0; pattern[i] != '\0'; ++i) {
s[i] = pattern[i];
}
// patternの最後のNULL文字はコピーしない
}
void replace(const char input[], char output[], const char pattern[], const char new_pattern[]) {
// input, pattern, new_patternはvalidな文字列とする。outputは十分長い領域だとする。
// inputを先頭から順番に見ていき、patternが現れたらnew_patternに置換する。置換は1度だけ行う
// 例:
// input = "abcdefgbcd"
// pattern = "bcd"
// new_pattern = "xxx"
// -> output = "axxxefgbcd"
int j = 0; // for output
int replace_flag = 1; // 置換したら0にする
for (int i = 0; input[i] != '\0'; ++i){
if (replace_flag && match(input + i, pattern)) {
// 置換が発生
override(output + i, new_pattern);
i += strlen(pattern) - 1; // i をパターン分だけ進める
j += strlen(new_pattern) - 1; // j を新しいパターン分だけ進める
replace_flag = 0;
} else {
// 置換が発生しない間はコピー
output[j] = input[i];
}
++j;
}
output[j] = '\0';
}
int main(int argc, char *argv[]) {
// mainは触らない
if (argc != 4) {
printf("Error. Write an input string, a pattern, and a new pattern. For example: $ ./a.out abcdefg abc xxx\n");
return -1;
}
char *input = argv[1];
char *pattern = argv[2];
char *new_pattern = argv[3];
char output[MAX_LEN];
replace(input, output, pattern, new_pattern);
printf("%s\n", output);
return 0;
}
week5_2
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#define MAX_LEN 100
void parse(const char src[], char dst1[], char dst2[]) {
// srcが"abc:def"のとき、dst1にabc、dst2にdefを記入する。
// srcはvalidな文字列であると仮定する。
// dst1, dst2の配列長は十分に長く確保されているとする
int flag = 0; // ':'に到達するまで0, したら1
int j1 = 0; // for dst1
int j2 = 0; // for dst2
for (int i = 0; src[i] != '\0'; ++i) {
if (src[i] == ':') {
flag = 1;
continue;
}
if (flag == 0) {
dst1[j1] = src[i];
++j1;
} else if (flag == 1) {
dst2[j2] = src[i];
++j2;
}
}
dst1[j1] = '\0';
dst2[j2] = '\0';
}
int match(const char s[], const char pattern[]) {
// sもpatternもvalidな文字列とする。sの領域は十分に長いとする。
// sの先頭から文字をチェックしていき、patternと完全に一致すれば1を、そうでなければ0を返す
// たとえば
//
// s = "abcdef"
// pattern = "abc"
// -> OK
//
// s = "abcdef"
// pattern "bc"
// -> NO
for (int i = 0; pattern[i] != '\0'; ++i) {
if (s[i] != pattern[i]) {
return 0;
}
}
return 1;
}
void override(char s[], const char pattern[]) {
// patternはvalidな文字列とする
// sにpatternを上書きしていく。sの領域は十分に長いとする。sはvalidな文字列でなくてもいい(最後がNULL文字じゃなくてもいい)
// 例えば s = "xxxxxxx", pattern = "abc" のとき s = "abcxxxx"になる
int i;
for (i = 0; pattern[i] != '\0'; ++i) {
s[i] = pattern[i];
}
// patternの最後のNULL文字はコピーしない
}
void replace(const char input[], char output[], const char pattern[], const char new_pattern[]) {
// input, pattern, new_patternはvalidな文字列とする。outputは十分長い領域だとする。
// inputを先頭から順番に見ていき、patternが現れたらnew_patternに置換する。置換は1度だけ行う
// 例:
// input = "abcdefgbcd"
// pattern = "bcd"
// new_pattern = "xxx"
// -> output = "axxxefgbcd"
int j = 0; // for output
int replace_flag = 1; // 置換したら0にする
for (int i = 0; input[i] != '\0'; ++i){
if (replace_flag && match(input + i, pattern)) {
// 置換が発生
override(output + i, new_pattern);
i += strlen(pattern) - 1; // i をパターン分だけ進める
j += strlen(new_pattern) - 1; // j を新しいパターン分だけ進める
replace_flag = 0;
} else {
// 置換が発生しない間はコピー
output[j] = input[i];
}
++j;
}
output[j] = '\0';
}
int main(int argc, char *argv[]) {
// 自由に編集してください。
// (1) 入力をパースする
char *input = argv[1];
printf("input = %s\n", input);
int n_rule = argc - 2;
char *rules[n_rule];
for (int i = 0; i < n_rule; ++i) {
rules[i] = argv[i + 2];
printf("rule%d = %s\n", i, rules[i]);
}
char patterns[n_rule][MAX_LEN];
char new_patterns[n_rule][MAX_LEN];
for (int i = 0; i < n_rule; ++i) {
parse(rules[i], patterns[i], new_patterns[i]);
printf("pattern%d = %s, new_pattern%d = %s\n", i, patterns[i], i, new_patterns[i]);
}
// (2) マルコフアルゴリズム
char output[MAX_LEN];
strcpy(output, input);
for (int i = 0; i < n_rule; ++i) {
char tmp[MAX_LEN];
replace(output, tmp, patterns[i], new_patterns[i]);
// outputとtmpが違う場合、すなわち、置換が発生している場合
if (strcmp(output, tmp) != 0) {
strcpy(output, tmp); // tmpの内容をoutputに反映
i = -1; // ルールを最初から適用しなおすため、continue後にi=0としたい。continueしたあと++iされるため、i=-1としておく。
continue;
}
}
printf("final output: %s\n", output);
return 0;
}